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実験で作ってみた

里見へ
この手紙をもって、僕の火消しとしての最後の仕事とする。
まず、僕の火消し技術を解明するために、大河内教授に解析をお願いしたい。
以下に、火消し方法についての愚見を述べる。
バグの退治を考える際、第一選択はあくまで少数精鋭であるという考えは今も変わらない。
しかしながら、現実には今回の場合がそうであるように、発見した時点で精鋭の離脱や入院をきたした進行症例がしばしば見受けられる。
その場合には、人員投入を含む政治的対応が必要となるが、残念ながら、未だ満足のいく成果には至っていない。
これからのバグの退治の飛躍は、少数精鋭以外の対応方法の発展にかかっている。
僕は、君がその一翼を担える数少ない火消しであると信じている。
能力を持った者には、それを正しく行使する責務がある。
君にはバグの退治の発展に挑んでもらいたい。
遠くない未来に、バグによるシステム停止が、この世からなくなることを信じている。
ひいては、僕の火消し技術を解析の後、君の研究材料の一石として役立てて欲しい。
火消しは生ける師なり。
なお、自ら火消し技術の第一線にある者が放火し、対応不能のプロジェクトで入院ことを、心より恥じる。

財前五郎